皆さんは、エスプレッソという珈琲に、どんなイメージを持っていますか?「苦くて、量が少なくて、通の人が我慢して修行のように飲むもの」
もしそう思っているなら、それはとても、もったいない誤解です。
そもそも、エスプレッソは何が美味しいのか。
それは、苦味だけを味わうのではなく、カップの底にスプーン山盛りのグラニュー糖をぽつんと落とし、優しく数回混ぜて口に含んだ瞬間に始まります。
一口目の甘さに続いて心地よい苦味が奥からじわじわ溢れ出す、まるでカカオ70%のビターチョコレートと、香ばしいナッツを掛け合わせたような、とろりと濃厚な甘み。それは飲み物というより、贅沢な「大人のデザート」です。それが、エスプレッソの美味しさです。飲んで胸やけがしたり、苦味と酸味で気持ち悪くなるとしたら、それは何かが違うと思います。
珈琲が苦手だった方が、「あまりの美味しさに思わず泣きそうになった」と漏らしてくれた、あの味の正体が、エスプレッソの美味しさです。同様に、珈琲は苦手で飲めなかった方がエスプレッソをきっかけに飲めるようになったという例は他にもネット上の動画でよくみかけます。
美味しいエスプレッソを味わう確実な方法は有名店に行って飲むことですが、それがなかなか敷居が高い・・・。でも、そこまで言うなら、味わってみたい気持ちもある。そんなあなたと、エスプレッソを味わう感動を私は分かち合いたいのです。私は、珈琲があまり好きではない、エスプレッソって何?というあなたにこそ、エスプレッソをご提供したいのです。そのために、こうしてブログを書き、開店の準備を進めているところです。
――なぜ、家庭では出せないそんな「多重な味の物語」が生まれるのか。
秘密は、やや深めに香ばしく焼き上げた豆を複数ブレンドするということと、圧力をかけて一気に抽出するという方法にあります。
20年前、私がこの世界に足を踏み入れた時は、自分で4種類の豆を組み合わせたところからスタートしました。それでも十分に美味しかった。知り合いに試しに飲んでもらっていましたが、ほぼほぼ「今まで味わったことがない美味しい飲み物だ」という感想をいただいておりました。実際に私のブレンドは15年以上も、あるお店で提供されていました。
しかし、もっとまろやかな舌触りを、もっと深い余韻を、もっと心地よい苦味を、と飲んでは試して、また作り直してを繰り返すうち、気がつけば現在は「7種類」の豆たちが織りなす、一つのオーケストラみたいなものになってしまいました。当時は4種類で十分だろう、と思っていたのですが、本場のイタリアの「イリー」を取り寄せてみると、「奥深いチョコレート感」がどうしても当時の自分ではブレンドではできなかったのです。
しかし、今ならチョコレート感がいまいち出せなかったその理由がはっきり分かります。チョコレートの味わい(香り、味、苦味、まろやかさ、その他)を一つのきれいな円として表現する、とします。それを少ない直線の集まりで描こうとすると、角張った感じの円になる。そういうことなのかな、と思っています。直線が多いと、それだけ丸い円に近づくイメージです。
ただし、豆の種類が多くなると、バランスを取ったり、豆同士の相性問題を解決したりすることが急激に難しくなります。今のブレンドに至るまでに20年もかかったのは、豆同士の相性問題の解決が大半といっても過言ではありません。
自分のブレンドの7種類の豆の役割について、書いてみます。
1 どっしりとしたチョコレート感を出す豆、2ナッツの香りを出す豆、3シルクのような滑らかさを与える豆、4明るい酸味を補う豆、5苦味のパンチを与える豆、6味の立体感を整える豆、7かくし味的な豆・・・・それらをバランスを整えながら丁寧にブレンドしています、私のブログのタイトル「SWEET & BITTER」は、最初に「甘く」そしてその後ゆっくりと「心地よい苦味が来る」という順番を表しています。最初の一口から飲み終わりまで一つの美しい物語を紡ぎます。
そもそも本場のイタリアでは、エスプレッソは一部のお金持ちの人のための文化ではなく、ごく一般的な庶民の方の日常なのです。日本とは確かに文化の違いはあるかもしれません。でも、「美味しい」は共通のはずです。パセオ通りにも、文化は違えど「美味しい」をご提供したいと思っています。私のささやかな願いです。
今から、皆様とお会いできる日が待ち遠しくて仕方がありません。
(パセオ通りオープンまで、あと 1812 日 / 本業の任務完了まで、あと 1714 日)

